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笠松と早川

部活の後輩に迫られている。俺は男バス所属で、うちに女子マネなんかいない。察してくれ。
もちろん俺は女子が好きだ(会話どころか直視もできないけど)。そっちの趣味もあっちの趣味もない。至って普通の男子高校生のはずだ。それが一体どうしてこうなった。毎日弁当作ってもらって(これがまた美味い)、今日、そいつが泊まりに来るとか。普通の後輩ならなんの問題もないんだ。相手がそういった好意をあからさまにしてくるからこっちだって意識してしまうだけ、そのはずだ。


「お前、あと歯ブラシと…あーまだ使ってない下着あったと思うから、着替えは買わなくていいか」
「…先輩のパンツ履いていいんすか!!?」
「ばっおま!!るっせえよ早川!バカ野郎!」

しかも俺のじゃなくて、未使用のヤツだから!目ぇ輝かせんな!!
手加減なしに頭を叩く。スーパーの中でも早川の声量は変わらない。しかも内容が内容なのに、どうなってんだこいつは。なんで俺ばっかり照れなきゃいけないんだよ。

野菜や肉以外にも、早川の着替えや歯ブラシを買って買い物を終えた。俺の家に入ってからも早川の高すぎるテンションから繰り出される奇行に冷や冷やしっぱなし。部屋に入った途端に大きく息を吸い込むし(怖い)、台所に立てばやけにニヤつくし(きもい)。


「あー、なんか手伝うことあるか」
「あ、じゃあ大きいさあ出してもあえますか?」
「おー…あとは?」
「エタスちぎってほしいっす」
「おう」

相変わらずラ行の言えない早川の横に立つ。横目に早川を見れば流石というか、慣れない台所で手際よく料理を進めていた。これが数ヶ月前まではお茶漬けしか作れなかったというから驚きだ。愛の力ってすごい。…愛の力?
あれ、もしかして今俺素直にこの異常な現状を受け入れてなかったか?…いや、そんなことはないはず、だ。ああ、だってこいつは男で部活の後輩で迫られてるだけで、あくまで一方的な関係…一方的?おいお前、毎日弁当作ってもらっててそんな突き放すようなこと考えてるのか?いくらなんでも薄情すぎるだろ。

「…」
「…」
「あの、笠松先輩!」
「ん?」
「なんか、新婚さんみたいっすね!!」
「ぶっ!」


あまりの気色悪さにレタスが真っ二つになった。





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