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笠松と森山

高校の頃からずっと笠松が好きだった。まっすぐな瞳もよく通る声も、自分の意見をしっかり持ってるところも、全部に惹かれた。
三年隣にいただけじゃ足りなくて(それどころかどんどん深みにハマって)大学も同じところに入った。ふと将来の事を考えたとき、笠松の傍にいられないと生きていけないような気さえしたのだ。
なまじ一緒にいる時間が多かっただけに携帯の画像フォルダは専用のファイルがカンストするほど笠松の写真が入っている。何枚かは夜のお供に使ったり、笠松には絶対に内緒だ。

もともと軟派な性格も影響してカモフラージュには困らなかった。女の子が好きなのは別に嘘じゃないし(それとは別次元で笠松が好きなだけ)、いつの間にか同性のセフレまで作ってしまった(しかも笠松似!)。おかげで笠松に俺のヨコシマな恋心はバレてないし、溜まることもなかった。
だから片思いは片思いなりに、上手くいっていたんだ。今日までは、


「…あの、笠松さん?」
「なに」
「その、誤解されておられるのかもしれないのですがですねあのっ」
「してねーよ、誤解。ホモなんだろ森山」
「(違う!違うけど!!)…軽蔑した?」
「別に。でもなんか、ムカついた…かも」
「は」
「なんだよ」

そっぽを向いていた笠松がようやくこっちを向いてくれた。
事は約三十分前。まあ身も蓋もなくいえば、セフレの先輩とやってるところを見られたのだ。といってもまだ未遂だったけど、誤魔化せるような状況でもなく、お邪魔しましたというように笠松は踵を返した。弁解とか、とにかく嫌われたくない一心で笠松を追って今に至る、わけだ。

「ムカついたって、なんで」
「知るかよ!いいからもう帰らせろ、明日も学校あるんだから」
「待っ、笠松!!」
「…?」
「お、れ、俺!お前の事がずっと好きなんだよ!高校のときから、そんで」
「っじゃあなんでセフレいんだよ」
「言ったら嫌われると思うだろぉ!」

もうヤケだ。どう頑張ったってこれ以上信頼を取り戻せそうにない。ただのホモだったと思われてサヨウナラよりは好きだった事を伝えた方が絶対にましだ。

「嫌、ったりは、別に、しねーよ」
「じゃあ俺の事好き!?」
「バッカ調子乗ってんな!!」
「痛い!!」

強烈な肩パンをもらって、なんとなく、それで、確かに嫌われていないことだけはわかった。




表題作。早川ってゆるふわ女子が出て来てびっくりしたわ。
130403




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