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森山×赤司

※森山(19)・赤司(17)




古ぼけた棚の隙間に鮮烈な赤が見えたような気がした。俺は目を疑った。
疑ったところで、あんな赤色は間違いようがないのだけれど。


ちょうど一年ほど前だ。彼と同じコートに立つことは終ぞなかったがその強すぎる印象は、よく頭に残っている。
WCのこの時期に、彼はここで一体何をしているのだろう。この場合のここ、というのは東京という意味だ。古本屋で何をするのかわからないほど俺も馬鹿ではない。いや、この時期に古本屋、という組み合わせを疑問視するべきなのだろうか。彼はきっとまだ王座についている。


(博識っぽい、読書家っぽい、スポーツのイメージではない)


考えれば彼についての正しい知識なんてない。そりゃあ接点なんてないのだから、知らなくて当たり前か。
古ぼけた背表紙に目を滑らせながら本棚を挟んだ彼について心中を埋めた。


(髪は自毛?瞳も生まれつき?女子にはモテるだろうか。いや、あの鋭い眼光で女子を怖がらせない訳がない)
(そういえば黄瀬とは仲がよかったのだろうか。あのひよこは曰く透明少年と、ガングロ野郎のことしか喋らなかったから)
(…あの時勝てていたら、彼と)


「すみません、そこの本いいですか」
「あ、ああ!…すまない赤司くん」
「…えっと」


失礼ですが、どちら様で?
失言だ。ああ、ああそうだよな、覚えているわけがないよな。


「なんでもない。俺達はただ君達に届かなかったんだ、それだけだよ」
「は?」
「忘れてくれ。いや、そもそも覚えてないのか」
「どこかでお会いしましたか?」
「ちょうど一年前にね。さよなら赤司くん、体には気をつけて」
「…」


さらりと手を振って古本屋を後にした。振り返ることはなかったが、背中に鋭い眼光が突き刺さっているのがわかった。
ナンパは止めだ。今日はこれから、愛すべき後輩共に活を入れに行こう。




130122



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