これからも 迷子になった子供みたいだ、と思った。自分がそこにいることを見せつけるように、自分の不安を吹き飛ばすように、俯いてわあわあ泣く恋人を見てそう思った。 「森山、ホント今日泣きすぎだって。式のときからずっとじゃん」 「はぁ?おま、前の席なんだから、見えてなかっただろ!」 「いや、鼻啜る音ずっとしてた」 「!!」 真っ赤になっている目元と鼻と、たった今真っ赤になった頬で真っ赤な森山の出来上がり。 恥ずかしいのか今度は唸り声を上げ始めて、俺は引き続いて背中をさすった。 俺の予想じゃこいつは学年中の女子から連絡先を集めるはずだったんだけど、ぐしゃぐしゃな顔でそんなことをするわけにはいかないらしかった。もう一生会えないんじゃないか、そんなぐらいにわあわあわあわあ。 クラスメイトやバスケ部の後輩が記念にとカメラを片手に来るけど、今日はイケメン台無しな写真しか残らないだろう。 「…こぼ、こぼり、明日からさ、もう俺達っ学校こないんだぜ?」 「そうだよ。明日から制服も着ないんだ」 「も、ユニフォームも着ないんだぁ」 「俺、あのユニフォーム好きだなぁ、深い深い青でさ」 「お、おれもぉ…うぅ、うぇ、大好き、こぼりぃ、だいすき」 「はいはい、俺も大好きだよ」 ユニフォームも、学校も、お前の事も。大好きだよ。 なあ、卒業まであっという間だったなぁ。一年のときは制服に着られて、先輩に絞られて、二年になったら仲間支えるって決意して、それから勝って負けて、もう卒業だ。 早かったなあ、楽しかったなあ。なあそうだろ森山。だからあんまり泣くなよな。俺まで泣きそうになるからさ。 「小堀、小堀ぃ」 「うん」 「今まで、ありがとう」 「こちらこそ、ありがとう」 「そんで、おれっ明日からもちゃんと、よろしくなぁ」 「こちらこそ、よろしくな、森山」 ようやくこちらを見た顔はまだまだ真っ赤に染まってた。 これからも春 える しってるか こいつら春から同棲するんだぜ 130309 |