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ロッカールームから


重く湿ったロッカールーム。三人だけ残った三年生は並んでベンチに座り、肩を落として震えていた。
静寂を破ったのは森山の嗚咽だった。喉で押し止められなかった声が漏れ、つられるように小堀も声をあげて泣いた。


「う、ぁ、ぁあ…笠松ぅ、小堀、俺、ごめんなぁ」
「ばか、なんでお前がぁっあ、謝るんだ」
「だっ、俺、おれがもっと…っぇ、っひ」
「そんな、だったら、俺だって!俺だって、もっと、体張って、もっと、もっと!」


言葉が堰を切って溢れ出る。身を縮めて涙を流す森山の肩を、間の笠松ごと守るように小堀が抱き寄せた。笠松だけが唇を噛み締め、眉を寄せて涙を堪えている。三年を振り返り頭を垂れるのは皆同じだった。ただ笠松の抱えたものだけが、未だに彼の双肩に重く、痛々しく伸し掛っていた。


「笠松、なあ、っ笠松、もういいんだよ、苦しいだろ、俺も苦しいよ、小堀も苦しい…もういいんだよぉ、泣いてくれよ」
「笠松、もう…終わったけどさ…終わったんだから、一人で抱え込むのっやめろよなぁ」
「……っ俺は!!」


開いた唇から言葉は続かなかった。代わりに二人のチームメイトの望む一年分の悲鳴が吐き出された。
ああ、ああ、言葉にならない悔しさばかりが流れ出る。存在意義を失ってしまった、目標ももうない。主将としての自負が、一バスケットプレイヤーとしての自分が、海常バスケ部で過ごした三年間が、あっけなく去っていたような気さえする。目の前が暗い、何も見えない恐怖が。


「っ勝たせられなかった…!勝てなかった!!…約束したんだ、誓ったんだよぉ、優勝するって…できなくて、負けて、負けて…俺、も、どうすればいい、先輩達にもっ顔向けできない!」
「笠松だけが負けたんじゃないよ、俺達海常が負けたんだ!っ俺達、が、」
「なあ、でも、俺達頑張ったよな!笠松も森山も俺も、二年も一年も監督も、みんな精一杯頑張ったよ!」
「それでも勝てなかったぁ!ぁあ、うわぁああ、ああっ」
「こぼりぃ…かさ、まつぅ、そうだよ、勝てなかったけど、全部出し切って頑張ったんだ!…だけどやっぱ、く、悔しいなぁ」
「俺だって悔しいよ!こんなっ悔しいの、はじめてだ」
「うわああ、ああ、もりやまあ!こぼりい!…っああ、あぁ」


次から次へと流れる涙も拭わずに身を寄せ合って喚いた。
悔しさも、苦しさも残らずに全て吐き出した頃、振り絞るような掠れた声で呟かれた。




「ありがとう」




超個人的に公式前に覚悟を決めてその時が来たら笑ってお疲れ様を言おうぜ企画その5
まんをじしてこぼり。
130224




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