海を 言いようのなさ。 選手の成長に期待したのが一年と半年前。見ていられない程に追い詰められた笠松を主将に指名したことに間違いはなかったと胸を張れる。笠松だからこそ、あのメンバーだったからこそ海常はここまで来れた。ただあと一歩、届かなかった。 何が足りなかった。いいや、足りないものなんて海常には何一つなかった。驕りでもなんでもない事実だ。 俺達は負けた。 夏、もう選手一人で涙を流す事はさせないと決めたはずなのに、今日も笠松はロッカールームに残った。 なあ、俺はなんて声をかける。お前はよくやったよ、最善を尽くしただろ、くよくよするな。情けない程に陳腐な言葉しか出てこない。撤収の時間だから急げ、そんな現でこの時間を邪魔してやりたくもなかった。 「笠松」 返事はない。代わりに押し殺しきれなかった嗚咽が届く。 「笠松、俺は後悔していないぞ」 なあ頼む、気休めでいいから届けよ。 「お前を主将にしたことも黄瀬を獲得したことも、何一つだ。俺はお前らを誇りに思う」 「よく頑張ったな」 わぁ、とひときわ大きな叫びが聞こえた。 超個人的に公式前に覚悟を決めてその時が来たら笑ってお疲れ様を言おうぜ企画その4 あんげんである。 130223 |