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I don't want an eagle.

「由孝さん、眼鏡変えました?」


「また視力下がっちゃって、レンズだけ変えると気が滅入るからさ」
「…でも、落ち着いてて似合ってます、こげ茶色」
「ありがとう」


由孝さんは目が悪い。出会った頃からあまり良くないとは聞いていたけど、社会人になって仕事でPCに張り付くようになってからはどんどん悪化してる。一緒に眼科に行った時、裸眼で一番上の段が見えていない事に衝撃を受けた。俺にはくっきりと見えるのに、この人にはぼやけて形すらわからないのだと。
全然見えないもんだね、俺は待合室で静かに笑う由孝さんの隣に座っているのが苦しかった。


「こんなに近くにいるのに、分厚いレンズ越しじゃなきゃもう俊くんだってぼやけちゃう」
「…」
「俺も高校生だったらさ、『君だけははっきり見えるよ』とか嘯けたのかな。大人ってこんなに夢語れないものだったんだね。皮肉だよ、目は悪くても現実はよく見える」
「…由孝さん」
「ごめんね、俊くん」


何に対しての謝罪。俺の顔が見えないこと?甘い言葉を吐けないこと?
両方いらないのに。それどころかいっそ、俺は自分の目だっていらない。


「由孝さん」
「ん?」
「ぎゅー」
「…苦しいよ」


密着して近すぎる顔にどちらからともなく吹き出した。由孝さんは昔からたまに、寂しそうな顔して笑う。
俺の旋毛より高い位置にある頬を手で撫で、耳にかかるプラスチックを机の上に避けた。そういえば結局身長は抜かせないままだなあ。


「見えないなら、見えるだけ傍にいますから」
「…俊くん」


夢を見れなくなったなら代わりに俺が夢をみればいい。叶わない願いもしないよりマシだ。特別な目なんていらないから、この人の助けになれますように。右の瞼と左の瞼にまじないのキスをした。




130111



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