不可解な聖誕の恵みをどうか二人にも分け与えてはくれないでしょうか 「人は生まれることが決まった瞬間から人殺しである」 「……は?」 突然何を。そう聞けば森山はPCに向かっていた椅子を少しずらして俺を手招きした。 「童貞スレなんだけどさ、精子って一回の射精で何億か入ってるらしい。でもって実を結ぶのはその中の一つだけだろ?だから無事に実を結んだ俺達はいわば『人になるの可能性』だった多くの精子を殺したんだとさ。で、この投稿者は『童貞の俺たちはそもそも子作りしてないから子どもに罪を負わせなくてすむ、童貞万歳』って言いたいらしい」 「…ああ、そういうことか」 森山の説明と画面を見て、ようやく理解する。 「でもこいつも自慰して無駄打ちしてるんだろ、どうせ。この言い分だったらそれ自体が罪になるんじゃないのか?」 「あ、確かにそうだわ。流石、笠松は目のつけ所が違う」 「そんなんで褒められてもなぁ」 なんとも言えない話題に腹のあたりにもやもやが生まれる。そもそも自分達の間では受胎する可能性など皆無なのだ。なんの生産性もない欲求を満たすだけの男同士は無駄打ち以外の何ものでもないではないか。 「生産性はないけど俺はお前と繋がれて幸せだし気持ちいいよ」 「ソープ通ってるおっさんだって同じこと思ってるだろ」 「…お前なぁ」 そういう愛のないのとは違うだろ、腹に軽く肘を入れられる。間違ったことは言ってないつもりだ。 「あ、そうだ処女懐胎」 「は?」 「知らない?マリア様、イエスキリストの」 「名前だけ」 「聖母マリアは夫ヨセフとセックスする前に身篭ったんだよ。だから処女懐胎」 「へぇ。救い主は産まれる前から俺達とは違うってことか」 「中2病が好きそうな話だな。生まれる時に何の罪も背負わなかったのに人間の罪背負って死んでったんだぜ、確か」 「詳しいな」 「こういう話もできておくと私立の女子と盛り上がる」 「…あっそ」 呆れた眼差しを向けてやればお前が一番だよ、などとほざく。別に聞いてないし。知ってるし。 「男子懐胎、できたらいいのに」 「できねぇよ。聖母と違ってそういう器官がない」 「処女懐胎できるんだったらアリだろ」 「無し。第一俺達でそんな事になったら産むの俺じゃん。却下」 「俺は欲しいけどな。笠松との子供。名前何にしようか、幸孝?硬すぎるかな」 「…話飛躍しすぎ」 そんな必死に形を求めなくても、ちゃんと好きだ。 旋毛に唇を押し付けて一言だけそう言えば、お前には敵わないなぁと水の張った目を細めて笑われた。 繋がりが欲しい森山と性に関してドライな笠松先輩 121222 |