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よくみてこっち

そういうところ、好きだと思った。

笠松先輩は食事の時に迷い箸しない。俺なんか次に何を食べようか、箸がふらふら。
子供のころは好きなものを最後にとっておいていた。年が二桁になるころには冷えて美味しくなくなっていることに気づいて、一番初めに食べるようにした。しばらくすると、がっついてると思われるかもしれないと周りの目を考え出して二番目くらいに手を付けるようになった。
今ではマネージャーさんに言われた健康的な食べ方、というやつを食事ごとに挑戦するようにしている。してはいるのだが副菜がどうの、炭水化物がどうので頭が混乱してしまって、それがまた迷い箸にもつながってしまう。
先輩は咀嚼している間に次に何を食べようかと考えているのだろうか。だから食事もテキパキとしていて食べる姿まで格好いいのだろうか。たまに口に物を入れたままもそもそと話すところも見かけるが、会話をしながらでもその頭の中では次に何を食べようかと考えているのかもしれない。


笠松先輩は俺が電話に出るときテレビの音量を下げてくれる。きっとお父さんが仕事なんかで電話をするときに音量を下げるようにお母さんにしつけられたのだろう。
なんて気遣いが出来る人なんだ、素敵な人だな、と思うのだ。
本当は先輩と一緒にいるときに電話なんて出たくない、とも思うのだが、子供じゃないんだからそんなことは言っていられない。だいたいかかってくる電話なんて基本的に仕事の話なので電源を切ってもいられない。
でも先輩の、俺を気遣って音量を下げてくれるしぐさがとても好きなのでたまにくらい電話がかかってこないと淋しいこともあるのだ。


嫌いなところは山ほどある。

使った調味料を出しっぱなしにするだとか、下着を干すのにまるで無頓着で、タオルやシャツで目隠ししないところ。そんなもの恥らってどうすると思うかもしれない。でも恥とかそんな問題ではないのだ、マナーに近いかもしれない。
トイレの便座カバーをあげっぱなしにするのもよくない。俺は子供のころから母や姉にこっぴどく言われてきたのだ。それがこの世の悪だと思うくらいにはなっている。
俺が立っているときすぐに膝かっくんを仕掛けてくるのだって、最初は、わあ先輩可愛いスキンシップ!なんて思えたが何度挑んでも膝の位置が合わないのがお気に召さないようでガツンと膝をぶつけられるのだ。痛いとは思わないがこんなところで諦めの悪さを発揮しないでほしい。

もう挙げればキリなんかなくて、そんなに嫌なのにずっと先輩といるなんて俺って案外懐が深いんだと思う。もしかしたら懐の問題じゃなくて妥協とか順応の類なのかもしれない。
とにかく俺は先輩が好きだけど先輩が嫌いでもあるのだ。こんな人に付き合っていけるのだってきっと俺だけだと誇らしくも思っている。
先輩も俺のことが好きで、でもそれと同じか上回るくらいに俺のこと嫌いなのかも。だけど不満があっても一緒に暮らしてくれるくらいには、結局俺のことが好きなのだ。

「ね、先輩。だからお互いのためにもずっと一緒に居ましょうね」




同棲率の高さよ…
150216





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