神さまこちら、青色のほうへ 青い色が嫌いだった。 俺を閉じ込めるみたいで、布団のカバーの青。 鏡の中の、奔放にはねる不健康そうな頭の青。うなされた朝の、目の下の青。 ラムネはのどで弾けて引っかかるから、青。 男の子の色だって、ぴかぴかのまま入らなくなった上履きの青。 泳げなかった海の青。 俺が飛べない空の青。 「東堂さん、青、似合わないよ」 それ俺の手に入らない色なんだ。東堂さんまでいやだなあ。 ほら、白でいいよ、東堂さんお気に入りって言ってたじゃん。だっさいプラスチックのカチューシャ。やったね、俺の羽の色。だからやっぱり白がいいんだよ。 制服の上着の硬い青も嫌い。でも東堂さんは大好き。だから早く卒業しちゃえばいいのに。茶色の革ジャンだって制服よりうんとましだよ。 「練習はどうした」 「今日は休めって、黒田さんに追い出されちゃった」 箱学のジャージも青くて嫌い。でも届かないのはもっと嫌い。もっともっともっともっと回さなきゃ、坂道くんに勝てないよ。わかってないんだあ、黒田さん。あの濃い青い目、節穴なんだ。 ノートを閉じてシャーペンをしまうと、東堂さんは走ってるときみたいに静かにこっちを見つめるから、やっぱりこの人二重人格なんだなあって俺は思う。あんまり見られると穴だらけになっちゃうよ。 「俺ね、青嫌いなんです。嫌いで嫌いで、なのに負けちゃったから。空、青かったでしょ、あれ俺のものじゃないんですよ。勝ってちゃんと俺の物にしないといけなくて、だから嫌いなのに手に入れなきゃいけなくて、そればっかり考えてたらお腹の奥がどんどん重くなって」 もう俺飛べない気がするから、助けてください。 布団カバー白いね! 140929 |