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痛くていいからお願い刺してね

耳、腫れちゃった。
いきなり軟骨はねーなって荒北さんが顔を顰めてる。うん、俺もそう思うかも。病院でやって良かったや。
開けた時はわっ痛い!って思ったんだけど、なんだか気持がふわふわしてたから、今のほうがずっと痛いって感じる。

「埋ってる?」
「チョットだけ」
「じんじんする」
「冷やすか?」
「んーん、良くないんだって。冷やしたら」

血が、えーっと、だんだん熱くなって…ばーってなっちゃうから。
そこまで喋って曖昧に笑う。本当はなんで良くないんだっけ。
とても上手に説明できたとはいえなくて困らせた。

「俺の耳今骨折してるんだあ」
「知ってる」
「荒北さん処女耳」
「っせ!処女とか言うな、触んな」

左の耳を触るついでに髪も撫でる。荒北さんも髪伸びたよね。まだリーゼントはできそうにないけど。一回でいいから見てみたいな。そしたらもう息の仕方わかんなくなっちゃうくらい笑えるかもしれない。そうなったら荒北さんは俺の背中を力加減なしに叩くでしょ。笑いが咳に変わる。

「荒北さんも穴開ける?」
「就活前にマイナス要素増やす気ねーから」
「俺が開けたげようか」
「聞けヨ」

ひとおもいに、バチン、って。
ピアッサーよりニードルの方がいいみたいなんだけど、出るかなあ、勇気。失敗したら痛いのは荒北さんだもんね。どちらにしたって痛いんだろうけど。


「あーあ、生きてるって思いたいのに」

自転車降りてから生きてるって思えなくなったんだ。限界ぎりぎりの感覚があまりにも遠い。
この前お風呂に入ってる時に目を瞑って体全部お湯につけてみたんだ。もうだめって思って顔をあげたけど、はあはあ大きく呼吸して、生きてるって感じはしなかった。
苦しいだけじゃだめ。痛いだけでもだめ。心の奥がくすぐったくて笑顔になっちゃうようなあの感じ。俺の幸せ。


「バァカだなあ」


どこ行っちゃったんだろ。




同棲中
140503




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