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こんにちは世界

土曜の昼下がり。天気は快晴。開け放した窓からは冬の冷たい空気が入ってくる。新鮮な空気は石油ストーブと呼気からうまれる窮屈な気体を中和した。

ベッドヘッドにもたれながらハードカバーの本を読む真ちゃんをちらりと見る。
うん、まあまあ、かなり健全な午後ではないだろうか。
俺の行動を除いては。

一定の間隔でぺらりぺらりと本が捲られる音と、時折のリップ音。
真ちゃんの集中力は本当にすごいと、こういう時は特に思う。くすぐったくはないのだろうか、足の指。


「しーんちゃん」
「なんだ」
「んー、やっぱなんでもないよ」

少しだけ真ちゃんの邪魔をして、俺は彼の左足の親指に視線を戻した。目は閉じないまま、再び大きな爪に唇を寄せる。うーん、変な臭い。
ちゅうちゅう吸い付いたり、下を這わせたりを繰り返して満足すれば隣の指に移る。片足分が終わったらもう片足。それが終わったら真ちゃんの機嫌に従って手の指だとか髪の毛だとか。
我ながらおかしな性癖だと思う。真ちゃんはよく付き合ってくれるよなとも思う。
俺は真ちゃんの体を食べる真似事をするのが大好きだ。あくまで真似事なので実際食いちぎったりはしない。カニバリズムは正直グロいと思うし、真ちゃんを自分の中に取り込む喜びより喪失感の方が断然キツイと予想している。


どれくらい足の指と戯れていたのか、だいぶ舌が疲れてきた。一つひとつに時間をかけ過ぎたのかもしれない。でもまだ、右足の指が五本も残っていた。もったいない。

「俺が二人いたら真ちゃんの左足と右足とでわけて、いっぺんにキスしたげられるのに」

ぼそり、無意識に呟いた願望はなかなかに名案なのではないだろうか。
真ちゃんの返事を待ってみたけど、活字から俺に移った緑色に見つめられるだけで言葉は出てこなかった。ていうか真ちゃんあほ面だね。
滅多にお目にかかれない表情に、俺はなんだか偉大な事をした気分になった。気を良くして理想の続きを真ちゃんに話す。

「右腕も左腕もさ、いっぺんにちゅーって。時短テクニックだね。そんで俺は舌が疲れないし!…乳首もそうしたら均等に腫れるけど、どうよ?」

真ちゃんはむっと顔を顰めて本から目を離した。俺は心底楽しく、かつ、真剣に話していた。

「だったら唇はどうするのだよ。上唇と下唇で分ける気か」

俺の脳裏を、俺とドッペルゲンガーの俺が互いに頭をぶつけ合いながら真ちゃんの顔の上で争う様がよぎる。
ヒドイ絵面だ。

「……俺、やっぱ一人で良かったわ」

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