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必要悪

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※ぬるくても突っ込んでる




雨音はなんだって隠してくれない。

ざあざあ雨が降っていた。真ちゃんはカーテンを締めて俺を抱いた。


「んっ…しんちゃ、そこっぉ」
「っ」
「んぁっぁ、はぁ…ね、だっこ、してぇ」


真ちゃんは俺が求めたらなんだってくれる。
たとえば情事中のハグだとか、いってらっしゃいのキスだとか。
たとえば仕事で嫌なことがあったときの、いつもは開けないちょっといいお酒だとか。

求めてなくったってなんでもくれた。
たとえば、緑間真太郎の未来だとか。
欲しいだなんて口にしたわけじゃない。そんなことできるわけがない。それでも緑間真太郎をくれたのは緑間真太郎自身で、それを受け取らないほど俺は人間できていなかった。

真ちゃんはいつもなんでもないふうに笑う。その薄ら寒い笑みが俺には真綿に見えた。俺の首に柔く食い込むんだ。
俺より頭のいい真ちゃんが事の無謀さに気づいていないわけがない。俺を隣に置いておくことがどれだけ生産性のないことか、俺以上に理解してるはずなんだ。それでも世間様にはとらわれないと主張するみたいに俺の居場所を残してくれる。本当は誰よりも臆病なくせに、俺のためを思ってくれる。俺は真ちゃんの恩恵を受けることが烏滸がましくて苦しかった。嬉しかった。

「っ何を考えている、高尾」
「ぅぁ、しっ真ちゃんの、こと」
「…そうか」
「ね、好きだよ真ちゃん」

ざあざあざあざあ、雨は一向にやまない。
真ちゃんが雨の日しか俺を抱かないことを知っている。雨音に紛れてしまおうと、らしくない浅はかな考えなんてとっくの昔に見抜いた。臆病な真ちゃんが何を考えているのかわからない俺ではない。だから抱かれる度に呆れるような、愛おしいような気分になる。同時に申し訳なくもあった。俺は雨音が何一つ隠してくれないことを知っているから。嘘をついているみたいで苦しかった。
それでも雨の日は待ち遠しくてしょうがないのだけれど。




真ちゃんおたおめー
130707




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テーマ「人外ファンタジー」
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