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蝉時雨に溶け込んだ会話

「青峰っちが死んだら俺、どうするかな」


いつだって突拍子のない黄瀬が、今日は一段と突拍子がなかった。
部活帰りに駄菓子屋の古ぼけたベンチで。まだまだ未来のある中学生がする話でないことは脳味噌の足りない俺でもわかる。
太陽は熱いし向日葵は咲くし蝉はうるさい、夏はこんなにも生命力に溢れているのに、なんだって黄瀬はこんな話をするんだろう。ああ、蝉採りに行きてえなぁ。


「選択肢四つの中から選んでくださいっス」
「なんでだよ」
「1、とりあえず首吊り。2、とりあえず舌を噛む。3、とりあえず海に飛び込む。4、とりあえず手首を切る」
「後追いしかねえじゃん」
「バレちゃった」
「隠す気もねえくせに」


困ったように笑った黄瀬はしゃくりと音を立てて氷菓子を口に入れる。困ってるのはこっちだっての。何が悲しくて自分が死んだ後の好きな奴の死に方について考えなきゃいけない。苛立ちを込めて自分の氷菓子に噛み付いた。歯にも頭にもキンときた。


「どうしよっかな、青峰っちが俺を置いて死んじゃったら」
「何で俺が先に死ぬんだよ」
「だって青峰っち、太く短くって感じじゃん。花火とかのタイプでしょ」
「そう言われたらそうかもしれないって思っちまうだろ」
「青峰っちってばホント単純っスねぇ」
「単細胞って言いたいのか」
「そこまで言ってないっス。思ってるけど」
「んだとごらぁ」


軽く懐に拳を入れればぎゃあ、なんて犬みたいな声が上がる。
ひどいっスよ、とかうるせぇ、とかいつもどおりの問答を終えれば、思い出したように黄瀬は溜め息をついた。何でそう、どんだけ先かもわからない事を悩むんだよ。


「はぁ…どうすっかなぁ」
「1も2も3も4もナシだ」
「え?」
「5、俺の事を考えながら老衰で幸せに死ぬ」
「…老衰なんて言葉、知ってるんスね」
「馬鹿にしてんのか」
「うん」
「死ね」
「いやっス!老衰で死ぬから俺」
「…そうしとけ」


バカのバカな話にはバカみたいな決着がついて、殺伐とした内容だったはずなのに俺は心中穏やかだった。




10000打キリリクで楸ちゃん「幸せな青黄」
ええ、わかります、わかります。幸せ?はぁん(゚Д゚≡゚Д゚)?ですよね。精一杯。
楸ちゃんに限りお持ち帰り可ですー!
130327




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テーマ「人外ファンタジー」
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