MAIN | ナノ






溶け残った冬

冬はつま先から凍えた。
ひたひたりと歩く度、足の裏から寒さが襲うのだ。逃げ場がない。だんだんと冷気は体内を蹂躙して温もりを奪う。俺の中のあったかいものが全部奪われてしまうような気にさえなる。あったかいもの、あったかい気持ち。あったかいのに。


これだから冬は嫌いだ。


「靴下はかねーの?」
「そ、いうこと言います…」
「言いますけど、文句あんのか?」
「うー、ん」


靴下を履くのが嫌だとか別にそういうわけじゃなくて、いや、実際履いていないからこんなにも冷たいのだけれど。


「俺があっためてやるよ」
「えっ」
「とか言われたいわけ?」
「あー、じゃあそれで」


曖昧に肯定するとちょいちょいと手招きをされる。先輩可愛い。
迎えるように開かれた腕に自分の腕を絡めて密着。ぶわっと愛が吹き溢れた気がした。ああ、やっぱり好き。


「スポーツマンなんだから体には気をつけろ。変に冷やすな」
「…はい」
「不満そうに了解してんじゃねえよ」
「いっだ!!」


ばしっ。頭を叩かれる鈍い音。
これ以上バカになったらこの人は責任をとってくれるんだろうな。殴られる度喧嘩腰の脳内俺がそんな事を考える。第一体は大事にって言ってるあんたが労わってくれなくてどうするんスか。


「恋人に病気されたら焦るだろ。ちったぁ脳味噌働かせろ」


乾いた唇から飛び出した甘い言葉に息が詰まる。詰まるけど苦しくなかった。いつだって不意をつかれるから、まるで俺が初みたいだ。
凍てついていたつま先ですらいつの間にか、熱を持っていた。




121219



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -