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なまぬるくても愛していいよ

冷め切った緑茶。
賞味期限の切れたチョコレート。
肌寒いけど暖房をつけるほどでもない室温。
新人のアナウンサー。
左右で度の違う眼鏡。
仕事でしか使わないパソコン。

一人でいると要らないことばっかり目につく。腹立つ。
女の子って、怒ってるときに目から入ってくる情報を頼りに、昔起こった腹立たしい事をわざわざ思い出してもっともっと腹を立てるらしい。ネットで得た知識。つまり今の俺、もしかしなくとも相当女々しい。

やだやだ、ふるり、頭を振って眉間をつまむ。いやらしい考えが頭から出て行った気がしないでもない。頼むからもう帰ってくるなよと、思う。



「今どこ」


電話。そうだ。呟いても届くはずないじゃないか、電話、かけなきゃ。
端末を手にとって受話器のマークを触る。同じ名前の並んだ発信履歴。政治家みたいな名前だよな、笠松幸男って。


発信音、ぷつりと音。


「…早く帰って来いよ」「もう怒ってないから」「うん、ごめんなあ」「電話、切りたくない」「…うん、待ってるから」


待ってるから俺がまた嫌になってしまわないうちに、早く早く帰ってきてほしい。


140413



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