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されどここは愛の国

「寒いだろ」

お前こそ。
長い付き合いだけど、寒がりのお前がコート一つで真冬の深夜にコンビニなんて考えたこともなかった。
ほら首。耳も頬も鼻の頭も指先も真っ赤じゃないか。

「な、帰ろう小堀」
「…嫌だよ」

コンビニの明かりが闇の中でぽっかりと白い、世界を作っていた。
少しビニールの飛び出たごみ箱の前で痴話げんかなんて、馬鹿らしいなあ。
空ばかり見てちっとも自分を見ない俺に痺れを切らしたのか、森山が恐る恐る俺の腕を、それでも力なくつかんできた。

「別になあ、お前の何が悪いってわけでもないんだよ」
「じゃあ出ていくなよ」
「悪いわけじゃないけど、これだめだろ、今の生活。ってふと考え込む瞬間ってあるじゃん」
「…」
「ないとは言えないだろ、お前も」


高校を出て甘酸っぱい空気を引きずりながら一緒に住み始めた。それぞれが通う大学も近かったし、何かと便利なことが多かったし。
だけどこれ、いつまで続けられるんだろうなあ。電話帳に女子の名前が増えたのは何も俺だけに限った話じゃない。
決定的に俺達の関係が変わったのは三年の秋。酩酊した森山が何を思ったのか俺に乗ってきたとき。あの時は俺も大変に酔っていたのが、いけなかったのかもしれない。
そういえば、森山が軽々しく運命と口にしなくなったのはこの頃だったような気がする。

「潮時なのかもなあ」
「…そんなことない」
「森山」
「俺は…小堀の事好きだよ」
「はっ…好きってなあ、高校生じゃないんだから、それだけじゃだめなのわかってるだろ」

俺達もう社会人みたいなもんなんだぞ。
真性じゃない同士でこのまま一緒に暮らしてどっちかに恋人が出来たらはいそうですかであっさり離れられるのか?
無理だろ。だったら傷が浅いうちに離れるのがどう考えたって得策じゃないか。
「離せよ」
「…やだ」
「離せって、森山」
「やだ」
「頼むから、ちょっとでいいから、離して」
「やだあ」

そう言いながらもふるふると手が離れていく。
俺はな森山、残念だけど、本当に残念だけどお前のために生きてるわけじゃないんだよ。お前の事だけ考えて生きていけるわけでもないんだよ。
二人でいると、どっちもダメになっちゃうんじゃないかって不安になる。
そんでどっちか女で俺とお前が結婚してても、いつかこんな風に森山のこと捨ててたんだろうなって。

捨てられたらもっとお互い楽に生きれたのかもしれないんだけどなあ。

「はあ…森山、帰ろう」




誕生日にこれはないなって思ったので早めに
140211




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