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氷点下の地球儀

先輩と、初めて手をつないだ。
特別な流れなんかなかった。ただ寒くて、暗くて、手の感覚がなくって、ただ隣を歩いていた。
ふとした瞬間に手の甲が触れたから、思わず指先を握った。なんだかとにかく冷たい棒きれみたいで、そんなことしか頭になかった。
先輩は何も言わなかったし抵抗もしなかったから、ああ、寒いんだなって思った。触れ合ったからって対してあったかくなるわけでもないし、むしろ痛いような、自分の器官じゃないような奇妙な感じしかしない。でも今ならコートのポケットに、無理くり二人分突っ込んでも怒られない気がした。


帰宅路なんか興味なさげに先輩は黙々と歩く。俺も置いて行かれない様に、置いていかない様に歩いた。
でも平静、装えるわけがない。だって先輩。手、つないでるとあったかいっスもん。
もう心臓がばくばく。もう激しく動くもんだから、そのうち皮なんて突き破って、どろりと血液が溢れてしまうんじゃないかと心配になった。こんなところで死んじゃって、先輩とまた明日って出来なくなっちゃうことが俺には怖くて怖くて、落ちつけ心臓、いっそ止まってくれと、なんとも頭の弱いことばかり考えた。先輩はそんなこと知りもしない。


ねえ先輩、今何考えてるんスか。俺は今なんとか生き永らえられるようにふんばってるんスけど、先輩そっぽむかないで。すべって転んじゃっても知らないっスからね。まあ俺が引っ張って支えてあげるけど。


だんだんだんだんと、俺が頭と心臓を重労働においやってるうちに、手があたたかくなってきたように感じた。
ぎゅっぎゅと握るように指を動かしてみると、先輩の手がむず、と動いた。くすぐったいのかもしれない。でも先輩、手を離そうとはしないから俺だっていらない気をつかって離してやろうとはこれっぽっちも思わない。


「黄瀬」
「なんすか先輩」
「いや、あったかいよ。ありがとう」

それだけでもう十分だと思った。




なめくじちゅーやみたいなのが書きたい。
140119




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