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あした

瞼をゆうるり持ち上げると、まだ薄らぼんやりした意識が、ごおごおと耳を麻痺させる音を拾った。不自然に傾いていた首を起こせば酷い骨鳴り。
ちらり、視線だけ右隣にやれば途切れ途切れの照明に照らされる男の、真剣な横顔。


「…黄瀬、次のパーキングで代わる」
「あ、先輩起きました?いいっスよ、まだ休んでて」
「代わる」
「寝起きの人に運転させられないっス」
「…先輩命令だ」
「…じゃあ、次のパーキングで簡単に食事しましょ。俺お腹すいた。それが済んだら交代」
「おう」

ナビの下の時計を確認すれば、夕飯時というにはあまりにも遅い時刻。それでいいのかモデル様、と、言おうと思ってやめた。



「ラーメン」
「ええ、でもこういうところのってあんまり美味しくなさそう」
「食えりゃいんだよ。塩がいいかな。味噌にするか。お前は?」
「んー、先輩がラーメンならあ、俺はチャーハンにするっス」
「わけわかんね」

他に客のいない簡素な食堂。食券を買って眠たげな顔の店員に差し出した。
いやに短い時間で料理が出てくる。油の染み付いたテーブルに向かい合って腰掛けて、食べた。

「じゃあ先輩、運転お願いしますね」
「おう。任せろ」


車の免許は早いうちに取っておけと、親の助言を鵜呑みにして、高校を卒業してすぐに自動車学校に通った。それだけれども黄瀬を隣に乗せたのは、ついこの間だった。怖かったのだ。きっと。
ガラス越しの景色から目を逸らしたらいけないことはわかっているのに、視界の端をちらつくきいろが無性に気になる気がして。



一年続くとは。
131217




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