優しい貴方は夏の裏側 ジリジリジリジリ。日差しの音。それから暑い夏を過剰に演出する蝉のオーケストラ。何をせずとも一粒、二粒汗が流れる。 部活でこってりと絞られ、帰り道では太陽に焼かれる。夏はまさに地獄だ。 「小堀ぃー、アイス、アイス買ってこうぜ、アイス。アイス食いたい食わなきゃ死ぬ」 「おぉー」 暑さにやられて肩を落としながらふらふら歩く同級生は買い食いを提案。却下する理由なんてどこにもない。 「っぁーうまい!生き返るー」 「大げさだな、森山は」 「んだよ、小堀だって死にそうな顔してたじゃん」 身長差からくる必然的な上目遣いに視線が合わせられなくて、バレない程度に目を逸らした。開襟した襟から覗く首筋が眩しい。伝う汗を拭うこともせずにアイスにしゃぶりつく森山を見てぞわりと、俺の中で何かが目を覚ました。 夏はまさに地獄だ。 こぼりはよこしまなひとだとおもう。 121218 |