MAIN | ナノ






悪友

 散々だ。
 7月ももう終わるっていうのに。カレンダーを見て溜め息を吐く。別に、祝うような歳でもないんだ。まだ雨は降る。ざあざあ。傘を忘れてしまった体に冷たい雫がじわじわ染みた。
 仕事は山のように押し付けられるし、昼間は熱々のほうじ茶を腿にぶちまけられた。目の下の隈とはしばらく連れ添ってる。ゆっくりたっぷり寝たいなあ。

 「…勘弁してくれよ」

 言葉の通り重い体を引きずってアパートの階段を上ったんだ。3階。別に一人暮らしだし、寝に帰って来ているような家。ボロくて狭くて駅から徒歩15分。不足を感じないからそれでいい。
 俺の部屋のドア前に人がうずくまって座っていた。酔っ払いが間違えてやってきてそのまま寝てしまったのかもしれない。ああ、もうなんでもいいからそこから避けてくれないか。

 「あの、具合悪いんですか」
 「あ、よう!笠松」

 俺の声にばっと反応した頭。もう何年か会っていなかった顔。ああ、小堀だ。そう思う頃には肩をひっつかまれて揺さぶられていた。

 「良かった!今日誕生日だろ?って言ってもあと20分もないけどさ、間に合って本当に良かったよ。おめでとう笠松」
 「お、まえ何でいんだよ」
 「久々に会いたくなったんだ」
 「…メールとか、電話でいいのに」
 「会いたかったんだ」

 そうかよ。他に言葉が出てこなかった。
 ぐしゃぐしゃだなー。そう言って笑った小堀の視線は濡れてべったりとした髪だとかワイシャツだとかに。それより俺はお前の唇が紫色になってるのが心配だよ。早く中、入ろうぜ。


 「お前、俺が帰ってこなかったらどうするつもりだったんだよ」
 「…その時はじゃあ、また来年来るよ」

 あんまり嬉しくって、ありがとうって言えなかったんだ。幸せだよ。




お誕生日おめでとう!幸せになってください。
8月9日までお持ち帰りフリーです。
持ち帰ってくださる方は最低限サイト名を明記の上コピペしていってくださいね_(:3 」∠)_

130729




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -