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地球瓶と30円玉


メーデー、メーデー。地球瓶の底からぎんいろの天蓋を越えて。

外の世界。きらきら。俺は知らなかった。このきらきらが外の世界の輝きではなく、この狭い空間と外とを隔てる硝子の輝きだということを。俺は知らなかった。外の世界の白群が、反射されていた自分自身の色だということを。
俺は知らなかった。瓶の中より、外の世界の方が息をするのが苦しいことを。

「笠松せんぱい、掬ってほしいっス」

俺はもう、狭い瓶の中じゃ生きられない。あの中は安寧で満ちていて、だけど身動きが取れない。
俺はもう、貴方なしじゃ生きられない。ここは醜悪で満ちていて、俺の白群じゃ色すら失ってしまう。

「べたべたする」
「とけてるんス」

せんぱいの体温。俺はあっという間に形を失ってしまうのだ。彼が溶かしてしまうのだ。俺はせんぱいの傍にいて、せんぱいに触れられて、ようやく群青になれる。二人ぽっちの群れ。綺麗な色でしょう。愛の色。俺はこの身に愛を宿す。俺は俺自身に愛を映す。ねえせんぱい。


「せんぱいお願い、救って」
「ああ」


そっと、天の蓋が開く。目の中できらきらの星が落ちた。




飴玉の黄瀬()
130711




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