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逆さに数えるアイラブユウ


※死ネタ
※森山×モブ女




森山が死んだ。森山が殺された。聞いた話によると、絞め殺されたらしい。付き合っていたという女の、ひどく赤く塗られた爪が森山の首に食い込んで、締め付けて、皮膚を破ったのだろう。繰り返し想像しているうちに、まるで俺自身その空間にいたのではないかと錯覚する程リアルに森山の最期を見ることができた。匂いも息遣いも衣擦れも悲鳴も嗚咽も全部俺の中にあった。

軟派な男だった。どうしようもない男だった。それでも奴には人を惹きつける魅力があったし、俺は魅了されたうちの一人だった。

死んだ理由なんてたぶん、痴情のもつれかそこらだろう。高校を卒業した俺達はどうなるわけでもなく、「普通の友達」から逸脱することなくつるんでいた。だから森山が誰と何をしようが俺の知るところではないのだ。

ある日いきなり訃報が届いたかと思えばいつの間にか葬式で、骨だけになった森山はあっという間に土の中だった。

森山を殺したという女には以前一度だけあったことがあった。呼ばれて訪ねた森山の家の玄関には真っ赤なハイヒールが並べられていて、決して乱雑に脱がれていたわけではないそれに苛立った。彼女の真っ赤な唇から飛び出す高い声に俺は吐き気を催したと思う。
森山が最期に聞いたかもしれないヒステリックな悲鳴が頭の中を駆け巡る。耳を塞いでも悲鳴は消えなかった。

砂埃を被った石を指でなぞる。その冷たさが心地よくて、奪われる体温が懐かしかった。




「なあ、俺なら幸せにしてやれたよ」




失くなってから言葉にする小堀。
130421




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