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赤いハートの砂糖づけ

埃のない窓枠、ベタつかないフローリング。きっちりとアイロンがかけられてたたまれた衣服。無駄なく健康的な食事。
ちょっと頑張り過ぎじゃないっスかねぇ。


サラリーマンはサラリーマンなりに疲れてるはずで、その上二人分の家事とか、なんで先輩がそこまで頑張るのかが俺にはわからない。俺ってそんなに頼りない?そりゃ確かに生活は不規則だけどさ、一緒にした食事の片付けくらい俺にも手伝わせてよ。水音に耳を済ませながらピンとした背中を見つめる。


「ねー先輩ー?」
「ん?」
「本当になんも手伝わなくていいんスか?」
「ああ」
「…俺もちょっとは役に立ちたいなー、なんて」
「いいよ、別に。茶でも飲んでろ」
「はーい」


すごすご引き下がったけどやっぱり納得は行かない。そんなに俺に家事をさせたくない?怪我をするとか、疲れるからとか?そんな、俺だって家事くらいできるし、むしろ器用な部類だし、疲れてるというならお互い様だ。
適当にチャンネルを回してバラエティで止める。この惰性的な感じが妻に協力しない夫みたいで俺はすごく嫌なんだけどなぁ。


「あ、お疲れ様っス」
「別に、疲れてねえよ」
「…ねえ先輩、どうして俺には家事させてくんないんスか?俺ってそんな役に立たなそう?」
「…別に役に立たないとは思ってないけど…」
「じゃあ何でっスか」


こんなこと聞かれるとはちょっとも思ってなかったらしい。笠松先輩は答えに困って考え込む。そんな悩むようなことなの、先輩。


「強いて言えば、負けたくないからかな」
「は?何にっスか」
「笑わない?」
「笑わないっス」
「お前の歴代の彼女」


ん?理解できてないままの俺を置いて淡々と先輩は話を続ける。
子供じみた考えだけどさ、お前、彼女いっぱいいたろ?そんなかで掃除すげー上手い人とか料理すげー上手い人とかいたんだよなぁって思うと誰にも負けたくなかったんだよ。だから全部一人でこなしたかったっていうか、そんだけだ。

俺は思わず目を見開いて、それから、がばりと先輩に抱きつく。


「そ、れは…先輩、好きっス」
「うん?俺も好きだよ」


だってつまり、俺の中で一番でいたいってことっスよね。




某大食いタレントさんのアイロン上手な理由にめっちゃ滾ったので黄笠ちゃん変換。
130320




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