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某日、貴男と私の終着点にて

若者たちと革命の映画だった。笠松先輩と一緒に見た。
恋人と見るようなものでなかったのは確かだろう。大砲の音が部屋中響いて責め立てるような鬨が鼓膜を震わせた。主要人物が次々死んで、ラストに残された青年は果たせなかった革命の代わりに恋人との日々を手に入れた。


「…ぅ、」
「…」


鼻を啜る先輩にティッシュボックスを差し出せば無言ですっと一枚抜き取られる。
涙の溜まった目はじっと画面を見つめたままでエンドロールを写していた。


「軍の人、いたろ?最初から自分の信じる正義を貫いて、あの人、あんな風に死ぬことなかったのに」
「自殺のこと?」
「自殺もだけど、ひとりで死んだこと」


あんだけ立派に生きたのに、求めてなかったかもしれないけど労いも安らぎもなくひとりで死んでったなんて。誰もあの人が死んだこと知らないってことだろ。どうして死んだのかどうやって死んだのか誰も知らないまま死んでったんだろ。主人公が羨ましいよ。大切な人に見守られて悔いなく逝きたいなあ。


苦しそうに顔を顰めて将軍の死への想いを吐露した。堪えていたであろう涙がぼろりと溢れる。
主人公の幸福の障害だった将軍にいい気持ちを抱く人はそういないと思う。それでも先輩はまっすぐな敬意と憐れみを示した。


「ごめんなさい」


先輩は、大切な人に看取られる平穏な、普通の死を望むんだ。
俺がいなければ、素敵な女性と出会ってちゃんと結婚して子供を作って、嗚呼、理想の死を。
わかっているのに、男同士の関係が不毛で、同棲なんて訝しみの対象でしかない。先輩を日陰に引きずりこみたかったわけじゃなかった。ただ傍にいて、俺はそれだけで満足だけどこの人にそれはふさわしくない。


「ごめんなさい、先輩、ごめんなさい」


一方的な懺悔にこたえをもらいたくなくて、何も見えないように両手で顔を覆った。背中に彼の体温がのる。その重みが逆に不安を煽った。溢れ出るエゴさえ塞いでしまおう。




レ・ミゼラブルを見てきたので
130131




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