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やさしい窒息死で左様なら

※黄笠前提
※黄笠←森←小




こぼり、ごめんこぼり、ごめん。
笑って涙を流しながら何度も何度も謝る森山を綺麗だと思った。




俺は森山が好きだった。森山は笠松が好きだった。笠松は誰のものでもなかった。
笠松の姿を追う森山を俺は隣で見ていた。見ているだけで本当に、本当に十分だったから。

バランスのとれたおかしな関係は黄瀬の介入であっさり終わった。
森山が2年ももだもだしているからいけないんだ。あっさり黄瀬が笠松を攫って行ってしまった。
森山は笠松と黄瀬を見るたび少し目を擦る。多分、俺しか気づいていない仕草だ。


「昨日さ、黄瀬と帰ったんだけどさ。アイツ笠松先輩笠松先輩ってうるせーの」
「はは、黄瀬は笠松が大好きだからな」
「そんで『マンネリにならないようにどうすればいいっっスかね?!』とか聞くし。俺に男同士の事を聞くなっつーの」


言いながら森山はケタケタ笑う。乾いた笑いだった。涙が出ているわけでもないのに目を擦っていた。痛々しくて、愛おしい。


「笑うことないよ」
「…は?」
「知ってるから。俺はちゃんと知ってる」


点になった目が、じわりじわりと湿気を帯びて溢れた涙が零れ落ちる。
口をきゅっと結んでいたがすぐにそれも綻んだ。


「っこぼり…俺さ、笠松の事好きなんだよ。好きだったんだよ…!」
「うん」
「き、気持ちわるいだろ、チームメイト本気で好きになって、後輩に持ってっいかれるとか…っそれでも、好きだったんだよ」
「知ってるよ。知ってた」


俺じゃ駄目?とは言わなかった。だって俺は笠松じゃないから。
情けないなぁ、好きな人を一時でも楽にしてやることすらできないなんて。


「急にこんな、困るよな。ごめん、ほんとっごめんな小堀」
「いいよ、謝んなくて」


弱みを見せないように笑われた。顔は笑っていても涙は止まっていなかった。

いいんだよ森山、謝ったりしなくて。俺にお前の失恋が嬉しくないわけがなかったんだ。それでも好きな人の幸せを願うなんて当たり前のことだろ。お前には幸せになって欲しいんだよ、俺。

綺麗な涙に酔いしれながら、自分の気持ちはひた隠しにした俺がその涙を拭ってやる事は出来ないんだと思う。




じぶんじゃだめなのをしっている。
130114




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