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※死ネタ




幽霊になっちゃえばいいと思った。

女の子じゃない俺が笠松先輩の隣にいたらそれは不自然。笠松先輩の健全な未来に俺はいらないでFA。
でも俺達はちゃんと好きあってて、俺はただただ周りが怖いだけ。この気持ちを咎められるのが怖いだけ。
先輩は強い人だから、批難されても俺みたいに泣きべそかいたりしなくて気丈で、俺に好きだって言ってくれる。
俺も先輩みたいに強い人だったらいいのに。人の顔色を窺う癖は色濃く根付いてちっとも薄まらない。いつまでたっても蔓延ったまま、俺を不安に突き落とす。愛されてる自信があるのに愛していいという確証がほしい。わがままだ。


だけど幽霊になっちゃえば。
先輩が男と一緒にいる事で好奇の眼にさらされる事はなくなる、と思う。だって幽霊ってそういうものでしょ。どこで先輩と手をつなごうが、先輩に抱きつこうが、見えないってことはイコール批難されない。俺は誰の眼も気にすることなく先輩のそばにいられる。
先輩はいつまで経っても一人暮らしみたいになっちゃうんだろうけど、俺がちゃんとお帰りなさいを言ってあげるからそれについては譲歩してほしい。ちょっとケチ臭いけど家賃が一人分っていうのも、先輩の負担にならなくて素敵だ。
それから仕事がない分空いた時間には、知り合いのところへふらりと飛んでいくのもアリかもしれない。鷹の目みたいに俯瞰で街をみて、黒子っちじゃないけどバレない事を活かして人間観察してみたり。こっそり笠松先輩の仕事姿を見に行ったり。
それから、それから幽霊になったら…――








「黄瀬…黄瀬、」


どうしたんスか、ねえ先輩。俺ならここにいるじゃん。泣かないで?


「なんで、自殺っなんか…馬鹿野郎、大馬鹿だよ、お前」


ヒドイっスよ!俺いっぱい楽しい事考えて、しあわせな道をみつけたんスよ?


「黄瀬、なあ、目ぇ覚まして…?俺の事好きだって、もっか、い…」


好きっスよ!先輩、好き好き好きー!一回だけなんて言わないで、何度でも言ってあげるっスから!


「っぅ…黄瀬ぇ…黄瀬ぇ」


…先輩?ねえ先輩!なんでこっち見てくんないんすか、笠松先輩?




「黄瀬、愛してる、っゆっくり休めよ。またな」


なんで、こっち見て言ってくれないんスか、先輩。





(貴方に届かない)




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