ずるくて臆病なただの睦言 「小堀はさ、広いよな」 もちろん物理的な意味もだけど、心が広いよ。対面して胸の辺りに顔を押し付けて正直な感想を吐いた。 小堀は優しくて気配り上手の聞き上手。ついでに天然。 「そうか?」 「そう、それから小堀は…」 ひどい。 唇を結んで三文字を閉じ込める。 恋人なんだから、俺が女の子に浮気したら怒ってよ。笑って許さないで、ちゃんと俺の事を小堀のものにしてほしい。言葉で縛って俺にふらふらさせないで。少しくらい窮屈でも小堀だったらいいよ。 なあんて言ったら困り顔で笑うのが目に見えてるから言わないけど。 「なあ、好きだよ小堀」 「…俺も、好きだよ」 微笑んで後頭部をさすってくる掌から愛しさが注がれるような。 こんなにも好き合ってるのにまだ足りない。 欲深いのは俺だけか。抱きしめる腕に力を込めた。 こぼりはもりやまはいだとおもう。 121228 |