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瞬きで変える世界色とコントラスト

「薄情なもんだよな」


寒さと喧騒の中でぽつりと呟かれた独り言。俺が隣にいるのに、多分独り言。


「何がっスか?」
「ん?あ、ああ。クリスマスの事」


ほら、意図してなかった会話の成立に言葉が一瞬出てこなかった。


「イルミネーションとか。何時間か前まではそこら中キラキラだったんだなって思うとさ」
「まあ、お国柄っスよね」
「だな」


異国の行事が本来の意味をなさないだなんて今に始まった事じゃない。ツリーが消えて赤い服着たおじさんがいなくなってるのは当然で正月飾りが飾られるのが必然だ。それでも一瞬の様変わりに寂しさを覚えるのは俺達が恋人同士だから、だと思っていいのだろうか。


「悪いな、冬期講習入れちまって。昨日だったらもっとそれっぽかったんだろうけど」
「いいんスよ。先輩の隣歩いてるだけで嬉しいっスから」
「…どうも」
「照れた」
「うるせ」


一日遅れのクリスマスデート。
キリストの誕生日だなんて俺達には関係ない。だってここ日本だし。だって俺達恋人同士だから。
イルミネーションもリースもツリーも何にもないけど、街全部で祝福されてるような錯覚すらする。寒さから逃げるように急かせかと足を動かす人達の目に俺達は留まらない。クリスマスにはもう興味も感心もない他人事。
二人の周りだけ、きらきらした雰囲気を残したように、ゆっくりと時間が進んでいるような感覚。幸せだ。


ふと手の甲が触れ合った。それすら特別な事に感じて自分のよりほんの少しだけ小さくて、それなりに骨ばった手を握る。先輩は少し肩を震わせただけで、振り払おうとはしなかった。




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