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言えなかった195回目の言葉

※195Qネタバレ




笠松幸男はずるい人だ。
唇を震わせ頭を垂れながら敗北を背負う後輩の肩から重りを取り去る姿を見て、そう思った。


黄瀬はI・Hで桐皇に負けたのは自分の責任だと言った。笠松は敗北の責任はエースではなく主将にあると言った。


俺は知っている。一年前の試合、エースでも、まして主将でもない笠松が全てを背負った事を。
犯したミスの大きさは違えど、笠松の言葉はあまりに矛盾するもので、見ていて苦しくなった。どの口が、お前は責任を背負わなくていいと言うのだ。その言葉を受け取るべきは黄瀬じゃない、お前自身だよ笠松。
責任がお前の主将としての存在意義になってるだなんて知ったこっちゃない。後輩だけ救おうだなんて虫が良すぎるんだ。


あの試合をただただベンチから見ていただけの俺にはどう頑張っても笠松と同じ景色は見れない。あの試合を呆然とベンチから見ることしかできなかった俺にはどう足掻いても笠松と同じだけ苦しめない。
先輩に無言の批難を浴びせられる笠松を見て何も出来なかった。部を辞めようとまで思い悩む笠松になんて言えばいいのかわからなかった。その重荷を少しだけでもわけてくれないか、なんて気休め。笠松はそんなの求めてない。
だから今俺に出来るのは後輩を、笠松と同じ苦しみに晒さない事。そもそも黄瀬のせいで負けただなんて誰一人として思ってないけど。




ずるいあなたとさびしいわたし
121224




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