junk | ナノ



氷紫

「雨だ」
頬に冷たさが触れて咄嗟に声が出た。
「あめだ、ま?」
「違うよ、雨。降ったみたいだ」
「あららー、ホントだ」
喋る間にも雨足は強まってあたりを濡らす。俺達ももれなくあっという間にずぶ濡れた。髪の毛が顔に張り付いてこそばい。
「濡れたな」
「そうだね」
こうも濡れてしまっては。急ぐでもなく、むしろ少しだけいつもよりゆっくりと歩いた。突然の雨に用意はなかったようで、周りはみんな走っている。ざあざあという音が俺達を隔離して、特別な空間に優越感を覚えた。
「…」
「雨は汚いから、舐めるなよ」
「それくらい知ってるし」
「ごめんごめん」
あんまり熱心に見つめるものだから、てっきりそう思っただけなんだ。そういうことにしておいてくれないかな。


2013.04.03 (Wed) 14:48




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -