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2014大晦日 覚書


金のためだとわかっていた、それもなんとか一食凌げるような端金。
それでもあの光景が頭から離れない。

隙間なく絡もうと寄せる腕。じっと、男を誘う目。囁く唇。

“私を買って”


金を惜しんだ客が去る。
その目でこっちを見てくれればいいのに、自分なら買える、だからこっちを向いてくれ。


魂を吸い取るというのは撮影機そのものよりも残った写真だろう。
たった数秒、自分のものになったちぐはぐな男にとらわれているのだ。
名前もわからず、声すら思い出せないような男の、雌そのものの目つきにあてられたことを生涯忘れない。
顔を寄せられ肩を抱かれ、隣り合って並んだ写真。戸惑いながらへらりと笑う昔の自分がいっそ憎いほどだった。

黒いスラックスにつるりとした白のノースリーブ。金の刺繍。
ほっそりとした身体つき、茶色の肌。
舞台の上を何度探しても彼が踊った確信が持てずにいた。
今となってはあの目だけが彼の真実だったのだろうと、思うほかないのだ。


▼キャバレーの男の子に性癖こじ開けられた大晦日だった。


2015.01.02 (Fri) 21:27




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