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剣部右京(サムドラ)

剣士として死ぬ事を決めたのだ。悔いはないのだろう。
もしも、もしも少しだけ、望んでいいと言われるならば。兄と共に家を継いで生きたかった。それが己の輝ける、進むべき道だったのだから。
それでも自分は決めたのだ。嬉々として鋼を打つより、真摯に切れ味を試すより、何より「守る」事を一とした。
踏みしめる地面の感触。奪った命の温さ。肉と骨の、斬れる音。
どんなに困難な敵であろうと、笑みは絶やさなかった。仲間との別れが避けられぬと知っても、刀を離さなかった。それが己のシンジョウ。

明日はきっと晴れるだろう。眼蓋を落とせば訪れるのだ、最期。
嗚呼、せめて、空を見上げていたかった。自分の知らない故郷へと続いている、青ばかりの空。剣部右京のささやかな幸せに満ちた十七年間とその終わりについて、黙祷


2013.09.14 (Sat) 23:09




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