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小森

「あ、あのさ、こぼり…」
そっぽを向いたまま森山が切り出す。今にも涙が溢れてしまいそうな目に、いい予感はあまりしない。耳を覆いたい衝動を抑えて次の言葉を待つ。唇は震えていた。
「…別れ、よう」
「…」
どうしてとは言わない。止めもしない。
ただ、他に好きな人ができたなら、幸せそうに笑ってくれればいいのにとは思う。俺のことを嫌いになったなら、嫌悪を全面に出してくれればいいのにとは思う。
森山の優しさは酷だ。
「わかった、別れよう」
自分から望んだことなのに、信じられない、と森山は目を見開く。ようやく俺を見た。
涙腺が決壊したようで、涙はぼろぼろ溢れてくる。けど、ごめんな。もう俺にそれを拭ってやることはできないんだよ。
「悩んで決めたんだろ。なら止めない」
こくり、顔を覆ったまま頷く。咽ぶ。
苦しいだろ。でも決めたのはお前だよ。
俺は苦しいよ。だけどお前が決めたから。
酷だろう。俺のは優しさじゃないけれど。ごめんな。


2013.06.05 (Wed) 18:38




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