▼ 高尾と緑間
真ちゃんは姿勢がいい。茶道に書道に勤しむ人だとか、ちょっと笑えちゃうくらいにはすこぶる姿勢がいい。
背筋はピンと張ってて猫背じゃないし、机と背凭れとお腹と背中の距離はきっかり拳一つ半。靴底は床にぴったりくっついていて膝は90度。書くときだってぶれない姿勢に目は釘付けだ。特に食事の時はいっとう綺麗だと思う。美しいって表現していいくらいだ。
俺は考えた。
どうして真ちゃんはこんなにも姿勢がいいのだろうかと。
例えば緑間家は何かの家元で、物心つく前から厳しくも優しい周囲の人々に教えられていただとか。
例えばおは朝狂の真ちゃんは姿勢の乱れは運気の乱れだとかいって、自分に辛く生きてきたのかもしれない。
はたまた真ちゃんは昔とても姿勢が悪くお医者様に厳重注意を受けたのかも。そんな情けない理由だってなきにしもあらずだ。
「小学生のときつまみ食いをしたらおばあ様にこっぴどく叱られたのだよ。以来だらしがないと怒声が飛んで来るような気がして気を抜いて食事をする事が出来なくなっていた。それが他の場面でも出てきていたのだろう」
お前の考えるような経緯は一切ない。
俺の膨らませた設定はあっけなく萎んだ。案外真ちゃんは普通だった。
2013.05.27 (Mon) 22:13