稲妻 | ナノ




 最近、俺の妹がどこか少し、おかしいのです。

 見た目にはとくに変わりはありませんし、チームのメンバーと一緒に居るときもそこまでおかしい様子はないのです。俺が春奈を、妹をおかしいと感じるのは、妹が一人で居るときと、俺と二人で居るときです。

 まず、彼女は俺のことを酷く丁寧に扱うようになりました。まるで硝子細工でも扱うようにです。俺がうっかり練習中や試合中にコケてしまうとします。以前の彼女なら優しく傷の手当をしながら「もう何やってるの」と笑ってくれました。ですが、今の彼女は、俺がコケると血相を変えて俺に飛びつくのです。そして「大丈夫、大丈夫?!!」と、まるで鬼のような形相をして俺を問い詰めます。大丈夫だ、と言ってやると、彼女は酷く安心したようにため息を吐きます。そしてそれから決まって俺のことを叱るのです。俺がコケようとどうしようと、以前の彼女ならそんなこと気にしなかったはずです。

 そして、彼女は俺の身体を酷く慈しむというか、愛おしむようになりました。たまに俺の部屋に来ては、彼女の真白く細い手で俺の腕を取り「綺麗」だと言うのです。時には首であったり、時にはふくらはぎ、目、鎖骨、爪、腹の筋肉……ようは愛でる箇所は何処でも良いのでした。しかし、彼女の一番のお気に入りは俺の右手であると思います。何故なら、彼女は俺の手を愛でるときだけはほかの箇所を愛でるときに比べ、何倍も何倍も優しく扱うのです。いつか彼女は

「お兄ちゃんの手、凄く綺麗」

「食べたいなあ」

 そう言って、俺の右手を撫でながらうっとりと笑いました。その時の胸騒ぎを俺は忘れることができません。彼女の笑みは、娼婦のように妖艶に美しくもあり、少女のように可愛らしくもあり、そして吸血鬼のように気味悪くもありました。彼女のことを「気味が悪い」と思い始めたのは、たしかこのあたりからだと思います。それからの彼女の行動は、俺が意識し始めたからなのか、ただただ異常でありました。

 俺が円堂やらとふたりきりで他愛もない話をしているときでさえ、彼女は首をかしげ、またあの不思議な笑みを浮かべながら「何をしているの?」とドアを開けるのです。正直今は、彼女の存在が恐怖でしかありません。彼女の異常に俺は気づいてはいけなかったのでは? とも思います。ただこれは、彼女なりの愛情表現だとも取れるそうです。とある友人が言っていました。少し形は歪んではいても、彼女はお前のことを好きでそうなったのだから許してやれ、と。好かれているのは十二分にわかっているつもりなのですが、やはり形が歪んでいては受け取りづらいものです。俺は一体どうすればいいのでしょうか。



∴最近俺の妹が少しおかしいのですが、


 彼女とぼくの秘密。
 誰か俺に教えてよ

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