稲妻 | ナノ




※捏造妄想たっぷり
※吉良ヒロト生存設定




「ひとみこおねえちゃん、りゅーじがころんだよ、ないてるのー」
「ええ!? りゅうくんまたこけちゃったの…。ええっとこういうときはどうすれば」

 兄さんはすごい人だ。

「ちちんぷいぷい、ね。これで大丈夫だよ。ほらまたみんなとサッカーしておいで」
「っ…うん! ありがとう!」

 吉良ヒロト。わたしの、ひとつ上の兄さん。

 兄さんはすごい人だ。子供のあやしかたや扱い方がものすごく上手で、兄さんにかかればさっきまでぴいぴい泣いていた子供であれど、忽ちぴたりと泣き止んでまた元気に遊びに行くのだ。そんなことは、わたしには到底無理なことである。もともと、そんなにこどもが好きな訳ではないのだ。けれど、わたしはこどもたちに与えられる兄さんの笑顔が大好きで、昔からよく後を追い掛けてこどものお世話をしていた。兄さんがこどものお世話をしている姿が好きなのだ。今では兄さんに感化され、こどもはそれなりに好きなのだけれど、やっぱりわたしは兄さんのきらきらした笑顔が好きだ。

「ごめんね、洗濯物を干している途中だったのに。…兄さんはやっぱり凄いわ」
「ふふ、大丈夫だよ? うーん、そうかなあ」
「ええ、だってこどものあやしかたに至っては天才的よ。兄さんの笑顔や言葉ひとつひとつで、あの子たちはみんな元気いっぱいになるもの」

 少し興奮気味で話す。兄さんはふふ、と笑いながら「ありがとう」とわたしの頭をぽんと撫でた。兄さんの笑顔や言動のおかげで元気いっぱいになるのはわたしも同じだと思う。心の栄養がたぷんと満タンになるのがわかるのだ。

 兄さんは干している途中だった洗濯物を再び干しはじめた。兄さんの繊細な指でかごの中から拾いあげられる洋服からたまに飛ぶ雫は、あかるい太陽に光って、まるで宝石がぴかぴか輝いているみたいだった。最後の一枚をハンガーにかけて、兄さんはぐいっと伸びをした。

「今日は本当に良い天気だね」
「ふふ、こどもたちもおかげで機嫌がいいみたいよ」
「散歩にでも行きたいね」
「…そうね、こどもたちを連れてどこか…」
「二人で、どうだい?」

 兄さんの発言に、思わず目を丸くする。わたしがなにも言えないでいると、兄さんはくるりとこっちを向いて

「さて、こどもたちが帰ってくる前にお昼ごはん作っちゃおうか。瞳子も手伝ってよ。料理はとびきり上手なんだから」

 ふわり、きらきら笑った。



∴午前11時の宝石



 兄さんの魔法。

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