稲妻 | ナノ
※涼野幼少期捏造
※なんか危ない
※非常に読みにくいです
このあいだサッカーのれんしゅうをしていたときに、ころんでひざをすりむいた。じんわりとあかいちがにじみでてきて、すこしだけひりひりした。じいっとながめていると、しだいにひざのうえにあかいたまがぷくぷくとうかんで、それからつうっとすねのほうへながれていった。みんなよりしろいはだにあかいろがまじって、じぶんのことだけどきれいだとおもった。それとどうじにあいつのかみのいろとおんなじだ、とおもった。にくたらしくて、いとおしくかんじた。ぺろり。ひざをなめてみた。あかいからいちごみたいなあまずっぱいあじなのかとおもっていたがちがった。てつのようなあじがした。わたしはちをなめたことはなかったけど、このあじはしっていた。あいつとけんかをして、なぐられたときにくちのなかにひろがるあのあじだ。とてもてつくさいあじがして、わたしにはまだまだこのあじはむずかしい。おとなのあじなんだとおもう。ああ、あのあじはちのあじだったんだ。ひとつかしこくなった。じゃり、というおとがくちのなかからきこえた。すなもいっしょになめてしまったらしい。
「ひとみこちゃんー! ふーすけがけがしたの。ちがでてるのー!」
だれかがそういってひとみこねえさんをよんだ。ひとみこねえさんはあわてたようすでかけてきた。てにはきゅうきゅうばこをもっている。「どこでころんだの?」ときくので「ここ」とこたえた。だってわたしはひとあしともうごいていない。ちはたえずながれていて、くつしたがよごれてしまった。ひとみこねえさんはまずひざについたつちなんかをみずでかるくあらいながした。「ちょっとしみるけどがまんしてね」そういってきゅうきゅうばこからしょうどくえきをとりだした。ぽたりぽたり、すりむいたひざにえきをたらすと、じんわりとしみこんでいくのがわかった。じいんといたんだけどそこまでではなかった。しみこみきれずあふれたえきをしろいたおるでふきとって、ひざをおおいかくすくらいにおおきなばんそうこうをはってくれた。きれいだったあかいろもすっかりふきとられて、ちをふいたティッシュがあかくみをそめてきゅうきゅうばこのとなりにちんまりとみをひそめている。「ふうすけえらいね、なかなかったね」あたまをぽんぽんとなでられた。あたりまえだ、だってわたしはつよいんだからな!
「うっわ、おまえ、どーしたのそれ」
あいつがひざのばんそうこうをみて、おどろいたかおをみせた。「サッカーでころんだんだ」といってやると「いたそーだな」とつぶやいた。かんしんしたようなかおだった。ぺろんとばんそうこうをはがしてみせてやるとあいつ、もといはるやはしんそこいやそうにめをかくして「みせんなよ」といった。はるやはちがきらいらしい。よわいな、はるやは、とわらってやった。
はったりはがしたりをくりかえして、ねんちゃくりょくのなくなってしまったばんそうこうをはりかえてもらいに、ごはんをたべたあとひとみこねえさんのへやへいった。ぶらりとひざからぶらさがっているばんそうこうをみると、「もうはがれちゃったのね」とわたしがなにもいわずともはりかえてくれた。「もうすこししたらなおりそうだから、あしたにははがしておこうね」またひざがばんそうこうでかくされた。
しばらくするときずもなおって、ばんそうこうもいらなくなり、もちろんあかいろもきえた。いままであったものがなくなると、とたんになぜかさみしくなった。とはいっても、またみずからこけてきずをつくろうとはおもえなかった。なによりふくやらがよごれてしまう。よごれたからしかられるとかそういうわけではないけど、わたしがいやなんだ。だからといってはなんだが、わたしはぺんたてにたててあったカッターナイフをてにとった。はものはまだあぶないからだめだといわれていたが、きにしなかった。じぶんのへやのすみっこにみをかくしてから、ぷつり、とひだりのてのこうに、はをうめた。ほそいきずができて、そこからこのあいだとおなじようにあかいたまがぷくぷくとうかんだ。それをこぼれてしまうまえにちゅう、とすってみた。このあいだとかわらないてつのあじ。いつのまにか、わたしはすっかりそのあじのとりこになっていた。