稲妻 | ナノ
「ガゼル、お前、それ」
「……?」
バーンが阿呆みたいに口をぱくぱくさせながら、私の方を見ている。どうやら私に何か用があるみたいだ。……くだらない用件なら脳天にノーザンインパクトだな。
「耳」
「………ノーザン」
「いや、違えんだって! はやとちりはお前の悪い癖だぞ!?」
「ならなんだ? 何が言いたい」
だから、とバーンは一呼吸置いて言葉を続けた。
「頭、耳生えてる」
「……」
バーンの言う意味が解らないが、慌てて頭に手をやる。そこには手に絡まりつく髪の毛の感触と、生暖かい何か。……これの事か?
「……い、イエス」
「ガゼル、これ」
どこから湧いてきたのか、アフロディが私に手鏡を渡してくる。何故ここに居るのか問い詰めたい気持ちは山々だったが、とりあえず今は手鏡に感謝をし、自分に起っている異常を最優先にした。
「な、なんだ? これは」
鏡に映る自分を見てみれば、頭には髪の毛と同じ色を持った猫のような山形の耳がふたつ、ぴょこんと存在していた。因みに無駄なおまけ、しっぽの様なものも鏡の中にちらりと見えた。