稲妻 | ナノ




 好きです、好きなんです、綱海さんのことが。世界で、……いや、宇宙で一番、大好きなんです!

― ― ―


 なんて、言えたらどんなに楽なことか。
 好きって、そりゃあ勿論先輩としてでもだけど、この場合の「すき」は恋愛対象としての「すき」だ。

 男同士、だけど。でも女も男も関係ない、たまたま好きになったのが男だっただけだ。でもその「たまたま」の所為で、俺のこの気持ちは誰にも相談できていない(円堂さんと風丸さんがどうとかは聞いたことはあるけれど)。

「おい、立向居?」
「え、あ、綱海さん」
「ぼうっとしてんなよ。練習始まんぞ」

 綱海さんが俺の肩を叩いてグラウンドへと走って行った。じんじんと痛むが、それすらも心地好い。…はは、重症だな。

 ぱっとグラウンドのほうを見れば、今度は円堂さんが大きく腕を振って俺のことを呼んでいる。

「おーい! 立向居!」
「はい! 今行きます!」

 急いでグラウンドへと走る。途中で躓いてこけそうになったが、なんとか持ちこたえた。一番遅くなると皆に注目されてしまうから、こけたりなんてしたら恥ずかしいし。それに綱海さんに恥ずかしいところ見てほしくない。

「遅れてすみません!」
「ははっ、いいっていいって。よーし、じゃあ練習始めるぞー!」

 円堂さんはやっぱり優しく許してくれて、ホッとした。これが不動さんとかなら叱られ倒されてたんだろうなあ。そう考えるとぶるりと身震いがした。うわあ。

「どうした、立向居?」
「なんでもないですよ」

 きょとんとした顔で尋ねてくる綱海さんはとても可愛かった。綱海さんの可愛さは犯罪級だ、と俺は思う。少しだけつりあがった黒目勝ちの目を「そっか、」とだけ言って細める。

 今日の練習は代表選考のときのように二つのグループに別れての実践練習らしい。一チームの人数は少なくなるけれど、その分だけ一人一人が多くボールに触れるから、ということらしい。俺はゴールキーパーだから、二チームに別れてしまうと円堂さんとは必然的に別チームになってしまうから少し残念だ。

 だけど、運よく俺は綱海さんと同じチームになれた。綱海さんはディフェンダーだからゴールのすぐ前に居て、近い。この件に関しては、俺がゴールキーパーでよかったなあと思う。

― ― ―


 相手チームに豪炎寺さんと鬼道さんが揃って居たのはやはり強かった、と思った。こちらのチームのメンバーが頼り難いという訳ではないのだが。やはり豪炎寺さんはエースストライカー、鬼道さんはイナズマジャパンの司令塔だ。うん、強い、強かった。

 ……ゴールキーパーだからこそわかる事がある。フィールドの一番後ろから全てを見れるからこそ、わかる事がある。

 今日の発見その一。風丸さんはやっぱり円堂さんのことを好きだ。試合中、風丸さんの視線が円堂さんのほうを向いていることが多かったから。俺にはわかるんだ。

 今日の発見その二。不動さんは鬼道さんのことを好き、だと思う。理由は風丸さんと同じだ。まだ確定したわけではないけど。

 今日の発見その三。綱海さんは今日もかわいい。俺が見る限り一番輝いていた。

「立向居っ! お前凄かったな、豪炎寺のシュート止めただろ!」
「えへへ、……そんな、たいしたこと無いですよ」
「いや、すげえって。やっぱり皆強くなってんだなあ。……俺も頑張らねえと、な!」

 宿舎に戻ろうぜ、と肩を組む。肩を組むのは綱海さんのクセなのかな、よくやられる気がする。クセでもなんでも、綱海さんに触れられるのは嬉しいからいいんだけど。あれ、俺ってこんなに我慢出来ないやつだったっけ。

「綱海、さん」
「たちむ、かい…?」

 綱海さんの頬にキスをした。ちゅ、と音がたったのは無意識だ。綱海さんはまたきょとんとして目をまあるく開いた。

「俺なりのスキンシップです。褒めてくれたの、嬉しかったです」
「……そっか。よし、じゃあ早く帰って風呂入ろうぜ!」

 一瞬の戸惑いは見せたものの、またすぐに肩を組み直した。サンキューな、立向居! と笑う綱海さんをみて俺も笑った。

 やっぱり変に気持ちなんか伝えたらこの関係が崩れてしまうんだろう。俺はこの関係をわりと気に入っているから、当分はこのままで。



…………………………
やっと書けました立綱…!この二人は本当に可愛いですね。綱海→←←←←←立向居と見せかけて、綱海→→→→→→→→←←←←←←←立向居とかでもいいです。矢印多すぎだ。そして最初決めてたラストを完璧に無視してしまった。本当は綱海さんから告白させるつもりだったんですが、いつのまにかこんな感じに…。でも、まあ、よかったかな!お粗末さまでした!

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