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優しさを知りすぎた羊(グラ緑)

「ヒロトー?」


まだ食べていると思って食堂を覗くが、ヒロトはいなかった。
たいした用ではないが、部屋からはるばる歩いてきたのでここで部屋に戻るのもあれなので、今度はヒロトの部屋に向かって足を進めた。



   †  †



「ヒロト?」


がちゃり。
ノックもなしに扉を開けると、ベッドにヒロトが座っていた。


「なんだ。そんなところでなにし──」


言葉は、声にならなかった。
─ヒロトじゃない。
雰囲気が、空気が、全てが、
あの時の───




「…ねぇ緑川」

「っは、い…」


息が詰まる。
唇を噛んで、下を向いて、深呼吸。
よし、大丈夫。
そう思って顔を上げると、


「っ!?」


すぐ目の前に、怪しく輝く双眸。
大丈夫なんかじゃ、なかった。



「グラン、様…」


俺がそう呟いた瞬間、ヒロトはゆっくり口角を上げた。


「俺は、ヒロトだよ?緑川」

「そう…ですね」



口から自然に出る敬語。
なに馬鹿なことしてるの、と笑い飛ばせば、いつものヒロトに戻ってくれたのだろうか。
それでも、そんなヒロトを笑い飛ばすなんて、昔自分はグランのものだと刻み込まれた俺には出来るわけなかった。


「好きだよ、緑川」

「っ…」


心に氷を落とされたかのようひやりと、同時に暖かい、ごちゃまぜな感覚が広がった。
俺も、好き。
グラン様でも、ヒロトでも。
でも、
昔の関係に戻るには、俺は優しさを知りすぎた。







優しさを知りすぎた羊


(目の前で微笑むヒロトに今だけ父さんを呪った)



…………………………
ひーちゃんからグラ緑!グラ緑!!グラ!!!緑!!!とりあえずわたし落ち着けひっひっふぅ

わたし…幸せです
ありがとうございました!


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