手を広げて微笑む飼い主に、愛犬が駆け寄り、その腕の中に飛び込む。感動的なラストシーンを映して、間もなくクレジットが流れ始めた。
彼に気付かれないよう、慎重に隣へ視線を移すと、瞬きもせずにスクリーンを凝視する姿が目に入った。うるうると目一杯に瞳を潤ませて、しきりに鼻を啜っている。ともすれば、ふとした拍子に涙が零れてしまいそうで声すら掛けられずにいると、彼が唐突に席を立ち上がった。

「トイレ行ってくる」

言うが早いか、薄暗い通路を素早く駆けてゆく背中を見送りながら、帰り際パンフレットを買って帰ろう、と決めた。


▽動物モノに滅法弱い犬塚



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