ざあざあと降り止まぬ雨の冷たさよりも、触れるか触れないかの位置に並ぶ彼の体温の方がずっと気になって、寧ろ熱いくらいだった。

「じゃあな。…これ、明日返すから」

不似合いな小花柄の傘を片手に踵を返した彼の後ろ姿は、右肩だけが濡れている。

「あ、あのっ」

水気を含んだその袖を掴んで、咄嗟にこう口走っていた。

「あの、良かったら…雨宿り、していって…?」

ぱちぱちと瞬きを繰り返す彼の背後では、雨が一層激しさを増して降り続いている。


▽何か一線越えそうなキバヒナ



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