森の中を流れる温かな旋律に耳を澄ます。
三者三様の歌声には、どこか彼等の人柄さえ表れているようでおもしろい。
「そういや、お前の歌って聴いたことないよな」
ふと呟かれた台詞に、銅は閉じていた瞳を開いて勇士を見た。どうやらときわもこの話題には関心があったようで、此方の返事を待つ二対の視線に促されて口を開く。
「歌なんて、知らない」
期待するような瞳から逃げるように云い切ると、途端に勇士が呆れたような声を出した。
「何だそれ」
「教えてもらった…こと……が、ないん、だ」
仲間の歌う戦いの歌ならば聴いたことはあったが、生まれてすぐに巣を追われた銅には、彼等のような温かい歌を教えてもらう機会はなかった。他の翼ある物たちと違い、銅にとって歌は聴くものであり、歌うものではない。
「じゃあ教えてやるよ」
「え、」
研究所にすげえ歌好きの奴がいてさ、と勇士が続ければ、
「俺も、しずくが歌ってくれた歌なら知ってる」
と、ときわも重ねるように口を開く。
研究所で生まれた勇士も、生まれてすぐにしずくと共に旅立ったときわも、自分の親の顔を知らない。それでも、彼等は歌を知っていて、そして自分も……。
「…………じゃあ、自慢の歌、を、聞かせてもらおうかな」
「さり気なくハードル上げてんじゃねえよ」
珍しい仲間の気遣いに、銅は嬉しくなって瞳を閉じた。
つながるうた
←