「……ときわ、入れて」
入り口から湿った空気が入り込んでくるのを感じて顔を上げると、丁度銅が雨を避けて穴の前へと降り立ったところであった。
自分より大きな彼のために穴を広げてやると、どうも、と呟きながら中へと入ってくる。
急ごしらえの浅いほら穴に並んで入りきったところで、雨が音を立てて降り始めた。
「勇士は?」
「あそこにいるよ、」
云われて視線を横へとずらせば、心地良さそうに雨を浴びる姿が視界に入る。
雨が好きだという彼の気持ちを、ときわはどう頑張っても理解できそうにない、と思う。
直接訊いたわけではないが銅も雨は好きではないようで、雨になるとこうしてどこかで雨宿りをしていることが多かった。
そういえば、鉄も以前雨は嫌いだと漏らしていたことがあったと思い出す。
翼が濡れて重くなるのだと話していたが、目の前の彼も同じなのだろうか。
傍目には水分など吸いそうにない彼の翼も、やはり雨には弱いのだろうか。
そう思って尋ねると、銅は一度首を傾げた後、そうではないのだと付け足した。
「別に重くなるわけじゃないんだけど、ね……なんか、錆びそうで」
その言葉に、ついまじまじと彼の硬質な身体を見てしまう。
コイルなどの無機質と見紛うような外見であればまだ理解できる。
しかし、
(錆びるのか、こいつも……)
そんなときわの視線を受けて、銅が肩を竦めてみせる。
「……と云っても、まだ錆びたことはないんだけどね」
ようは気分の問題だよ、と続けられた台詞に馬鹿馬鹿しくなって、ときわは大きくため息を吐いた。
用心にこしたことはない
ジョウト組その3。銅とときわ。
結局3部作になった感じ。
2009/03/24