「うら、起きやがれっ」
寝ている間掛けていた薄布を引き剥がされて、ときわは不満を訴えるような唸り声を上げて身体を起こした。
見上げた先では、勇士が腰に手を当てて此方を見下ろしている。
元の人相の所為もあるのだろうが、口元に浮かんだ笑みはどう見ても悪役のそれだ。
気を抜くと再び閉じてしまいそうな目を擦りながら視線をずらせば、おそらくは勇士に押し付けられたのであろう薄い布を、律儀にもたたんで傍らに置く銅の姿が視界に映る。
「……、」
近くにしずくの姿が見えないことを確認してもう一度その場に横になると、今度は容赦なく背中に蹴りが入った。
いくら硬い身体とは云え、力任せに蹴られればやはり痛い。
「……っるさいな、少しはマシな起こし方ができないわけ?」
「云ってるそばから寝ようとしてる奴に他にどんな起こし方があるってんだ」
尚も云い募る相手に無視を決め込んで瞳を閉じる。
主の用事で無いのであれば、どうせまた勇士にあれこれ連れ回されるのは目に見えていた。
宝探しにしろ惚気話にしろ、関わらないに越したことはない。
「……よし。ときわ、ハイドロポンプか鋼の翼、どっちがいいか選ばせてやるよ」
「えぇ、俺はや、だよ。めんどくさい……、」
「乗れよそこは! ったく、そもそもお前は……」
枕元で始まったどうでもいい口論を子守唄に、気持ち良さそうな欠伸が一つ。
爽やかな朝の光が、賑やかな一日の幕開けを告げていた。
おはよう、いつもと変わらない日!
ジョウト組。ときわと勇士。
2009/03/24