▽物書きさんに贈るバトン

(鉄×銀)





朝の訪れた静かな森の中を、宿地に向かってゆっくりと歩く。
銀の行く手には、闇の纏いを脱ぎ捨てたばかりの世界が、凛と澄ました表情で広がっていた。
その景色にどこか裏切られたような気分になって、密かに眉根を寄せる。
先程までは確かに手を伸ばせば届きそうだった世界が、手の届かぬ遥か遠くで素知らぬふりをしているようで、この時間帯はあまり好きではなかった。
生まれてから何百回朝を重ねようと、それは未だ変わらない。

ふと見上げた遥か上空に、見知った姿を見つけて目を凝らす。
しかし、憎らしい程に白い陽光の眩しさに、早々に白旗を上げて視線を外した。
闇を愛する者にとって、朝の空は高く、そして遠すぎる。
苛立ちながら落とした視線の先に昨日の雨の名残を見つけて、銀は静かに足を止めた。
覗き込めばそこに広がる白い空と、此方の姿に気付いたのか、その場に留まる鉄の姿。

束の間、何もかもを手に入れた気がして、狐はくつりと喉を鳴らした。





10.水溜まりを題材に、普段貴方が書く文体で短文を作って下さい





ラストは1の銀視点。
普段の文体って云われるとなんか緊張…(苦笑)
バトンだいぶ楽しかったです!

(090807)