▽灰牙×メイ









メイが、墜ちた。



「あの子にはやっぱり、彼女が必要だったんだ」

抑えた声でそう呟いて、メイはまた縋り付く手に力を込めた。
肩に埋められた頭は上げられることはなく、灰牙から彼の表情は伺えない。

「彼女に着いていった方が、あの子もきっと、幸せだったんだよ」

先程からずっと同じ姿勢で座っているせいで、木にもたれた背中がぎしりと痛む。
思わず小さく溜め息をつくと、目の前の背中が僅かに震えた。


灰牙が好きなのは、自分のことを好きだと告げて笑う彼であった。
しかし今、彼の瞳に映るのは、“彼女”と“あの子”の姿だけだ。
自分の姿を映さぬ瞳は、どうにも好きになれそうにない。


「どうすれば、あの子は……」


灰牙は願う。
嗚呼、早く自分の好きな彼に戻ってくれはしないか。
でなければ、きっと――













そのほそいのどにきばをたてる








震える背中に回した腕は、未だ動かせそうにない。




***
灰メイダークサイド(笑)
メイが沈むともれなく灰牙も沈みます。悪×鬱。


(100205)