▽しずくと銅










「忌み子」という言葉を聞いた。
聞いた瞬間に動けなくなった。
この世界との繋がりの、唯一つさえ覚えていない自分。
そんな中途半端な自分の存在に、確かな名前が与えられてしまったかのようで。

「……しずく?」

隣から遠慮がちに声を掛ける銅に首を振ることで答えて歩き出す。
そんな自分を見て、彼は少し迷うような間を置いた後、訥々と話し始めた。

「例え誰に……何に、見放され、ても、他の誰かに、必要と、して、もらえたら……たぶん、それでいいんだ」

って俺は思いたいけどね、と云って目を伏せる彼に、ふと、初めて出会った時のことを思い出した。
感情を映さぬその瞳を過ぎった、一瞬の戸惑いの色。
もし自分が、彼にとっての繋がりになれているのだとしたら。



彼に、彼らに必要とされている。
それだけで、自分は――





(此処にいることを、許されている、気がするんだ)










(鴉)





しずくと銅。
会話が成り立つご都合設定。
2009/03/27