▽鉄×銀





(happy halloween!)






「Trick or treat!」

そんな言葉とともに伸し掛かってきた銀をとりあえずと押し戻して、鉄はいつものように溜め息を吐いた。
目の前で大きな黒いトンガリ帽を直している彼に、そういえば今日はハロウィンだったと思い出す。
黒い帽子は彼の淡い黄色の毛並みをより明るく見せ、それがなんとなく眩しくて、鉄は僅かに目を細めた。

「ちょっと鉄、今日はハロウィンだよ。ハロウィンってのは……」
「……いい、さすがにもう覚えた」
「それは結構」

毎年この時期になると決まって浮かれ出すマスターと行動していれば、さすがにハロウィンがどんな行事なのかぐらい覚えるというものだ。
おそらくそれは彼にとっても同じことで、だからこそしずくに便乗するようにこんなことをしているのだろうけれど……

「で、さっきの質問への答えは?」

楽しそうな笑みを浮かべて問い掛ける彼の考えが、今回ばかりは用意に想像できてしまって苦笑する。

「酒でも用意すれば満足かよ」
「まさか、それじゃあ足りないね」

どちらに向いても同じ結果なら、乗ってしまった方が楽というもの。
そんな考えに行き着く辺り、今日は自分も浮かれているらしい。

「じゃあお前のご所望の品は?」
「そんなの決まってるじゃない」


Trick or treat !
甘いお菓子か悪戯か、道化師は甘美な夢を見る。








2007/10/31

どちらにしろ喰われる鳥。合掌。